発電機マメ知識TRIVIA
2019.11.29
【発電機の負荷試験】解説 法改正・費用相場・必要性・故障トラブル
消防法の改正に伴う負荷試験実施の確認強化
防災用途で設置されている非常用発電機は、電気事業法に基づき行われる定期点検の他に、消防法により総合点検と共に負荷試験実施の義務があります。
以前から負荷試験は義務付けられていましたが、平成30年6月の消防法改正に伴い、負荷試験実施の確認が厳しく運用されるようになりました。

改正ポイントは
①ガスタービンは負荷試験を免除となります。
②ディーゼル発電機は「予防保全整備」を行うことで負荷試験実施タームを最大6年免除を受けられます。
③周辺環境により負荷試験の実施が困難など、代替手段として「内部監察等」の採用
法改正により、負荷試験実施の有無はこれまでより厳しく確認をされています。
背景には、地震や災害が続く中で一定数の「非常時に動かない」発電機がある問題への対策です。
非常用発電機は普段動かさないために未整備状態のままにされていることが大半です。
長期間、未整備状態のままにしていますと、非常時において発電機が「始動しない」「途中で止まる」など整備不良で正常稼働できない可能性は非常に高くなります。
非常用発電機の負荷試験と必要性とは?

所有者様に費用と手間を強いる負荷試験とはそもそもなぜ必要なのでしょうか?
発電機の負荷試験とは
発電機が正常に発電をしているかを確認するための試験になります。
電気事業法で行われている定期点検は、エンジン始動の確認が中心です。
消防法で行われる年に一度の総合点検は、エンジンと制御の確認です。
では発電機の発電性能はどう確かめるのか?
発電機のエンジンが動いたことで発電能力の性能が保持されていることは実際に負荷をかけてみないと分かりません。
また、発電機の始動確認や無負荷状態での運転は車に例えるとアイドリング状態です。
実際にその車はエンジンが止まらずに道路を走ったり、坂道を上れるのか?
そこで発電機に負荷を投入し発電性能を確かめる必要があります。
負荷試験の種類 実負荷試験と模擬負荷試験
発電機の発電性能を確かめるためには、発電機へ負荷を投入(発電機に負荷を与える)します。
実負荷試験とは
発電機に繋がっている負荷を実際に動かす試験が「実負荷試験」です。
メリットは
発電機性能の確認と同時に負荷設備の動作確認も同時に行えます。
デメリットは
試験時には停電状態になるため、商業施設の運用面で休館日を設けたり、オフィスビルやテナントビルではエレベーターも止まるために、人の出入りを制限するなど合意形成とスケジュール調整に大きな負担が生じます。
模擬負荷試験とは

発電機に繋がっている先の負荷を切り離し、二次側のケーブルを模擬負荷試験に繋ぎこみます。

発電機の発電エネルギーを模擬負荷試験を経由し熱に変換します。
電源にドライヤーをさして発生した電力を消費するイメージです。
この熱交換式の模擬負荷試験器の普及により、作業スペースの縮小、模擬負荷試験の準備の簡素化が実現され、現在では発電機の負荷試験はこの模擬負荷試験が主流になっています。
メリットは
30%負荷はもとより、100%負荷まで細かく発電性能を確認できます。
ディーゼル発電機の弱点は無負荷運転や軽負荷運転には向かないため、どうしても通常点検時の無負荷運転だけでは、燃焼しきれていない未燃焼カーボンが煙道に残ります。
未燃焼カーボンが溜まると機器状態に影響を与えるだけではなく、引火など予期せぬ二次災害を招きます。
模擬負荷試験器を用いて高負荷運転を行うと、煙道の未燃焼カーボンを熱により除去できます。
また、模擬負荷試験器を使っての試験では停電状態にする必要がなく、施設運用面での負担が生じることはありません。
デメリットは
実負荷とは切り離して試験を行うため、実負荷の正常稼働は確認できません。
模擬負荷試験の費用と相場
発電機は低圧と高圧の二種類あります。
低圧の場合の費用相場は

15万円~(発電機の出力容量が大きくなる、ケーブル長が延びるほど費用が上がる)
高圧の場合の費用相場は

60万円~(現場環境、施工可能時間などで変動)
高圧発電機の負荷試験は、負荷試験器自体がトラックの荷台に載せたまま高圧ケーブルを発電機側まで送ります。
試験器の寸法と重量も大きくハンドキャリーできないためです。
高圧・低圧とも費用相場は年々下がっています。
中には低圧のみ数万円台で行う会社も出現しました。
長期間未整備のままで行う負荷試験には重大な故障を招くリスクがある
長期間ノーメンテナンス状態の発電機に負荷運転を行うと、重大な故障を招きます。
交換時期を超過し経年劣化した部品は、本来の機能を果たせません。
例えば適正粘度が失われたオイルはエンジン保護の役割を果たせず、負荷運転時にはエンジン内部の焼き付きなど、重大な故障を招きます。

防災型非常用発電機の点検と負荷試験は法律で実施を定められていますが、
発電機自体のメンテナンス整備は任意です。
なぜ負荷試験では故障トラブルが生じるのか?
発電機の負荷試験を行う会社を大きく選別すると2種類あります
①負荷試験のみの専業、メンテナンス整備はノウハウがない
②発電機整備を行う会社が付帯サービスとして負荷試験を提供している
①の多くは異業種からの参入です。
そのため非常用発電機の負荷試験は行えますが、それ以外のメンテナンス整備に関する専門性は低いです。
専業会社のメリットは負荷試験費用が安価であることです
負荷試験のみに専門特化しており、負荷試験以外はサービス対象外或いは問題が生じたときに外部へ委託する形を取ります。
そのため、負荷試験を行う前の整備状況や故障が起きる予兆などの予見知識が乏しいと、そのまま負荷試験を行い発電機にダメージ=故障トラブルが生じます。
すべての会社がこれに当てはまりません。
しっかりと整備の外部委託がスキーム化されている場合もあります。
所有者様が負荷試験で故障を招くトラブルを回避するには
②の負荷試験とメンテナンス整備を一括で行う専門業者に任せるのが無難です。
発電機の設置年数が古くなるほど、故障トラブル発生のリスクは高くなります。
②の発電機整備を行う会社が付帯サービスとして行う場合は
①と比較すると費用がどうしても高くなります。
発電機整備の有資格者・専門技術者が負荷試験を行います。
長期間の未整備状態にある発電機の負荷試験を行う前には
必ず消耗部品の交換整備をしておかなければ故障トラブルが生じるため、予見される整備必要箇所は負荷試験とは別に保全整備をグロスで提案します。
なぜ使っていない発電機の整備が必要なのか?
消耗品は使用頻度を問わず経年劣化します
オイル、冷却水は1~2年を経過するとその後、年数を重ねるごとに経年劣化が進みます。

消耗品の経年劣化は非常用発電機内部の周辺機器全体へ摩耗劣化を早める
品質劣化したオイルはエンジンの寿命を縮めます。
防錆効果が失われた冷却水(LLC)はラジエーター本体の腐食を早めます。
普段動かす機会が少ない非常用発電機は、冷却水が一定の場所に留まりやすく、品質変化した冷却水は目詰まりの原因になります。
目詰まりした箇所からの水漏れや最悪の場合にはオーバーヒートまで繋がります。

別置き燃料タンクの構造上、オイルと燃料が混ざる
燃料とオイルが混ざらないように機能しているフィードポンプは、常に別置きタンクにある燃料の圧力を常に受けています。
普段から頻繁に動かす発電機は、燃料圧力を逃がすタイミングが訪れます。
しかし動かす機会の少ない非常用発電機は、別置きタンクからの高低差による燃料圧がフィードポンプへ常にかかっているため、定期的に交換をします。
オイルパンに燃料が混ざる現象は、内部のメカニカルシールが経年劣化により漏れていくためです。
フィードポンプは5年前後で交換をしないとオイルパンに燃料が混ざります。

蓄電池(バッテリー)は受注生産 納期は1.5~3か月

非常用発電機に搭載されている始動用の蓄電池(バッテリー)は受注生産です。
蓄電池(バッテリー)の期待寿命(交換ターム)は5~7年です。
蓄電池(バッテリー)の期待寿命を超過していますと、電圧不足による始動不能の症状が現れます。
長期間、蓄電能力が失われた蓄電池交換を放置していますと、充電器が故障します。
充電器とは、放電を繰り返す蓄電池へ充電器を通し商用電源にて充電を制御します。
蓄電能力が失われた蓄電池は、充電器がより充電をしようと過流電になりやすく、この状態が長く続くと充電器本体が故障をします。
病院や特養施設など人命を預かる施設や、BCP用途で導入している企業様は電気設備の定期点検時に始動不能と指摘をされても、蓄電池(バッテリー)は受注生産であるため、発注から納品までに1.5~3か月、非常用発電機が使えない状態が生じます。
非常用発電機が使えない期間を生まないために、蓄電池(バッテリー)の交換タームをマネジメントする必要があります。
非常用発電機は、使用の有無に関わらず、蓄電池(バッテリー)をはじめオイルや冷却水などの消耗品は経年劣化により周辺機器の摩耗劣化を早めます。
未整備状態の発電機は、普段動かしている発電機とは異なり、非常時に正しく動いてもらうための準備として消耗品交換の予防保全計画が必要です。
負荷試験による故障のトラブル事例
冷却水漏れ
オイル漏れ
燃焼バルブの破損
潤滑油圧力低下による緊急停止
オイルや冷却水を交換したことがない車が、いきなり坂道を上ったら・・・
エンジンを載せている発電機も同じです。
まずは負荷試験を行う前に発電機の健康診断を先に行うことをお勧めします。
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