発電機マメ知識TRIVIA
2018.02.08
非常用発電機のガバナ(調速器)の役割
非常用発電機のガバナ(調速器)とは?
エンジンの回転速度を一定に保つ役割を担います。
発電機の回転数とエンジンの回転数は同期(同じ回転数で合わせている)しています。
発電機の先にある負荷が作動した場合と、その負荷の使用を止めた場合では
負荷が急激に変わるためエンジンの回転速度が大きくブレる形となります。
車で例えると、急な坂道を進んでいる状態のアクセルを
そのまま平坦な道になっても同じ踏みしろでアクセルを踏んでいると
急にエンジンが回りすぎて危ないですよね。
そこで坂道が終わって平坦な道になったら、自動車はドライバーが適正なアクセルに戻しますが
発電機の場合にはドライバーがいないので、このガバナがその調整をする役割を担います。
ガバナが故障すると
発電機のエンジン回転の制御が出来なくなり、大変危険です。
すぐに修理を依頼し、発電機は自動起動しないよう措置をしておきます。
ガバナ(調速器)の種類
発電機のガバナは機械式と電気式(電子式)の種類があります。
非常用発電機(停電時などに使う発電機)は
構造がシンプルであるために故障するリスクが低い機械式が多く採用されています。
機械式ガバナ
1800回転のエンジンを搭載している非常用発電機で例えますと
ガバナは1800回転に合わせて燃料を与えています。
アクセルを1800回転に合わせて踏み込んでいる状態です。
機械式ガバナのメリットは
構造上シンプルであるため、故障リスクは電子式に比べ低くなります。
機械式ガバナのデメリットは
100%の負荷がのっても、反対に負荷が掛かっていない無負荷状態の運転でも常に1800回転に合わせているため、発電機の場合にはエンジン始動時に
黒煙や白煙が出ます。
これは不完全燃焼の状態が生じるためです。
そのため、未燃焼カーボンが排煙菅に溜まることから
定期的に負荷運転または負荷試験(模擬負荷試験を含む)を行うことで未燃焼カーボンを除去する必要があります。
模擬負荷試験では抵抗値を調整できるため、発電機容量に対して30%以上の負荷を与えることで、排煙温度が上がり、より未燃焼カーボンの焼却効果が期待できます。
未燃焼カーボンは、引火のリスクがあります。
負荷運転を1時間行うことで、排煙菅の温度が上昇し未燃焼カーボンを焼却できます。
回転数の制御がシンプルであるため、燃費は常用発電機に比べて悪くなります。
電子式ガバナ
常用発電機(ピークカットや大きな動力源を使うときに電力を自家発電する)は
複数の発電機と繋げたりする同期運転など繊細な調整が機械式には難しいものが可能となるため、電気式が主流です。
電気式のメリットはこの他にも細かい制御が出来るために燃費向上にも役立ちます。
具体的には
排気圧、吸気圧、燃料圧、燃焼温度などを測定し、負荷に合わせて最適なアクセルコントロールをコンピューター制御にて行います。
先ほどの1800回転で例えればバルブ1~6番まで、1本ずつ燃料圧を調整します。
そのため、排気色はアイドリング状態から負荷を投入した状態でも、機械式ガバナに比べて排気色は綺麗な状態になります。
都市部に設置されている非常用発電機の中には
周辺環境から黒煙を出すのにはばかられるロケーションがあり、電子ガバナを採用されているケースもあります。
機械式ガバナより電子式ガバナ搭載の発電機の方が本体費用は高くなります。
ガバナによる設定周波数の微調整

周波数と回転数が記載されている発電機銘板

エンジン銘板
例えば、4ポールのエンジンの場合、60HZ帯で1800回転、50HZ帯で使用する場合の設定は1500回転になります。
2ポールのエンジンでは、60HZ帯で3600回転、50HZ帯で3000回転です。
50HZに比べ60HZはエンジン回転速度が早くなり、エンジンと同期している発電機もそれに比例して定格出力は60HZの方が大きくなります。
設定周波数の微調整
非常用発電機の点検メンテナンス時には、設定周波数の確認も行います。
非常用発電機は停電時など、万が一の時に正しく負荷機器を動かす役割を担います。
設置されている負荷機器も、設定周波数があるため
もし非常用発電機側の設定周波数に誤差がある場合には調整をします。

周波数調整前 57hz

周波数調整後61hz
写真で分かり難いのですが
60hz帯で使用する非常用発電機の設定が
57hzに誤差が生じていたため、61~62hzに調整しました。
57hzのまま放置しますと、最悪の場合は接続負荷機器が正しく作動しないリスクが生じます。
60hz帯の設定を61hzとしたのは
始動電流による若干の電圧低下を考慮し、+1の余裕を持たせています。
この周波数の微調整もガバナによるエンジン回転数の微調整で行っています。
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